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その日は冬の寒さに加え、夕方から降り出した雨のせいか凍てつくような寒さになった。
誰もいないシンとした夜の公園にある大時計は、誰に告げるわけでもなく午前1時を指している。
女は悔やんでいた。
そんな人気のない裏通りを傘もささずに走っていることを。
仕事が遅くなり、彼氏に迎えの連絡をいれ断られた後、苛立ちを紛らわすために裏通りを歩いたことを。
息を切らし走りながら、心の底から悔やんでいた。
「はあっ…はあっ」
どれくらい走っただろうか?雨を避けるために入った高速道路の橋の下。
乱れた呼吸を整えながら、女は雨に濡れて額に張り付いてしまった髪を、すっとかきあげる。
「…」
女は不安げに後ろを振り返った。
うっすらとした明かりの中、自分が来た道を眼を懲らして見てみる。
遠くで電車の走る音が聞こえるほか、そこには何もいない。
「…気のせい?だった?」
ぽつりとそう呟いた。
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