第一節『月夜』

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その日は冬の寒さに加え、夕方から降り出した雨のせいか凍てつくような寒さになった。 誰もいないシンとした夜の公園にある大時計は、誰に告げるわけでもなく午前1時を指している。 女は悔やんでいた。 そんな人気のない裏通りを傘もささずに走っていることを。 仕事が遅くなり、彼氏に迎えの連絡をいれ断られた後、苛立ちを紛らわすために裏通りを歩いたことを。 息を切らし走りながら、心の底から悔やんでいた。 「はあっ…はあっ」 どれくらい走っただろうか?雨を避けるために入った高速道路の橋の下。 乱れた呼吸を整えながら、女は雨に濡れて額に張り付いてしまった髪を、すっとかきあげる。 「…」 女は不安げに後ろを振り返った。 うっすらとした明かりの中、自分が来た道を眼を懲らして見てみる。 遠くで電車の走る音が聞こえるほか、そこには何もいない。 「…気のせい?だった?」 ぽつりとそう呟いた。
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