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「ニャー」
突然の鳴き声に女はビクリと身震いをした。
足元には何時からそこにいるのか、一匹の黒猫が佇んでいる。
「いつの間に?」
女は不思議に思いながらも、しゃがみ込み猫の頭に触れる。
「ひっ!!」
触れた瞬間女は悲鳴をあげた。
氷の様に冷たい…。
そう、その猫には体温が無かったのだ。
しかし…、眼下のその猫は何かに向かって鳴いていた。
その方向…女は恐る恐る自分の背後に視線を移す。
そこには………。
影があった。
人影が。
暗くてよくは見えないが、確かに誰かがそこに立っている。
背格好からして成人した男性のようだが。
何も言わず、まるで幽霊の様にそれはそこに佇んでいた。
「あの…」
不安を拭い去るように、女は影に話し掛ける。
「……どうして?」
その問いに、それは小さく、か細い声で答えた。
「………どうして?逃げるんだい?」
その影はそんな事を口にしながら、ゆっくりと近づいてくる。
やばい、危険だ。
女は本能でそう悟ったが、金縛りにあったように身動きがとれない。
その間にも、影は女へと歩を進める。
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