第二節『夜風』

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「間一髪ってところね」 突如現れた七瀬は、夜斗の側に立ちそう言った。 その横には朔鵺の姿もある。 しかし、安心したのもつかの間、光の腕は七瀬が張った結界すらも喰らおうとしていた。 「朔鵺!」 七瀬の声に答え、朔鵺は瞬時に葛葉の元へと移動した。 「我は願う闇を封じる力を…この手に…」 印を結びながら七瀬が唱えると、右の手が青白く光る。 その手を七瀬は十六夜にかざした。 例え様のないうめき声をあげ、光の腕はもがきながら十六夜へと吸い込まれていく。 「あんた…何者なんだ?」 その行為を見ていた夜斗が尋ねるが、七瀬は答えないまま奴の方を見た。 「和馬君…そんな姿になって…」 哀しそうに七瀬は言う。 「君の相手をしたいけど、急いでるから…」 少し目を伏せながらそう言うと、七瀬は右手を夜斗に、左手をルヴァと玉麟に向けた。 「朔鵺、飛ぶわよ」 『少々手荒くなるが辛抱してくれ』 七瀬の言葉を聞いた朔鵺は、そう言って謝ると葛葉の回りに結界を張った。 「和馬君…哀しみに飲まれては何も解決しない…。 君の運命はこんなものではないはずよ…」 光が体を包み込む中、七瀬は優しくそう言った。 気が付けばこの一室に残されたのは奴…和馬のみ。 割れた窓から入る夜風は、優しく和馬の頬を撫でた。 そんな中、和馬は弥生の事を思い出していた。 紅い瞳からは一筋の涙。 彼の中に遺された、一握りの理性。 その証に、和馬自身、気付くはずもなかった。
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