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ヒートが木を引き抜こうとしたまさにそのときだった。
「今よ!!」
どこからともなく声が聞こえた。
その声に合わせて、木が浮き始めた。
ヒートは呆然としている。いきなりの出来事で足が動かないようだ。
木がヒートの真上に移動した。
そのまま落ちてくる。
ヒートはバーチャルの世界から消えた。
さっきの声を頼りにムーヴはある女の子の後ろに移動した。
未来だ。
声だけで正確に後ろへ移動するムーヴ。
手に持っている棍棒が降り下ろされた。
しかしムーヴは異変に気付いた。
棍棒が動かない。
焦っているムーヴの横から何かが物凄い勢いで突っ込んできた。
ムーヴは直撃して気絶した。
「あら、いつの間に」
未来は気付いてなかった。
「とりあえず、一人倒したな。あんな棍棒ぐらい、軽々止められるぜ」
草を掻き分けながら帝司が出てきた。
「ああ。とても抵抗のある動作だよ。蹴り飛ばすなんて」
気絶したムーヴを担いでオールが出てきた。
「じゃあ未来はもういいから、倒した人を見張っててくれ。あとは何とかする」
そう言って、オールと帝司はまた長い草の中へと消えていった。
一方、シャロンとサントは草の中から未来を見ていた。
自分たちは戦闘力がほとんどないので、未来透視をシャロンの力で覗こうというふうになった。
「あと80秒で草薙君がキャノンさんと正面から会うって。キャノンさんに報告して」
シャロンが囁く。
サントは80秒を数えながら走った。
「あ、いた。キャノンさん。あと55秒で草薙君と正面から会うらしいです。それまで誰も来ないらしいですから、55秒数えてるんで構えてください」
「わかった。頼んだぞ」
「…50…49………」
サントは数えて始めた。
0.1秒たりとも誤差はなかった。
「…10…9……」
キャノンは空気弾を構えた。
「……2…1…」
その瞬間、前方の草が揺らいだ。
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