2.出逢い、入学式

7/11
5722人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
  ……誘惑に負けた。   「…………ん゙…?」   教科書の角って意外と痛いからね、起きちゃったよ。   寝坊君はのろのろと顔を上げた。   …キレられたら嫌だから早く帰ろう。   「…………痛。 …………………ねぇ、アンタ」   何事もなかったように教室を出ようとしたところ、寝坊君に呼び止められた。   …怒られんのか?私。   かと思いきや寝坊君は無表情で手招きしてきた。   「……………?」   疑問に思いながらも、私は寝坊君に近づいた。   そうすると寝坊君は自分の頭をチョイチョイ指差して   「タンコブできてない?」   と言った。 もちろん、彼が指さしている場所は私がチョップしたところだけどね。   「…いや、タンコブはできてないと思うよ」   「そう?」   寝坊君は相変わらず無表情のままで頭をさすっている。   なんか軽く罪悪感感じるな。   「ごめん。俺が起こしそうとして叩いた」   …正直者だな~私って。   「そう。ありがとー」   「………は?」   なにこの子、叩かれてありがとーって何?   「起こしてくれたんでしょ?」   寝坊君はそこで初めて表情を変え、口端を上げた。   …まさに小悪魔的笑顔。  すぐに無表情に戻ったけどね。   「…まぁ。でも頭ごめん」   「いいよ。そーでもしないと俺起きないから」   確かに起きなさそうだったもんね。   「てゆーかさ、アンタ誰?」   …言われて気づいたけど、まだ私も寝坊君の本名知らんかったわ。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!