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……誘惑に負けた。
「…………ん゙…?」
教科書の角って意外と痛いからね、起きちゃったよ。
寝坊君はのろのろと顔を上げた。
…キレられたら嫌だから早く帰ろう。
「…………痛。
…………………ねぇ、アンタ」
何事もなかったように教室を出ようとしたところ、寝坊君に呼び止められた。
…怒られんのか?私。
かと思いきや寝坊君は無表情で手招きしてきた。
「……………?」
疑問に思いながらも、私は寝坊君に近づいた。
そうすると寝坊君は自分の頭をチョイチョイ指差して
「タンコブできてない?」
と言った。
もちろん、彼が指さしている場所は私がチョップしたところだけどね。
「…いや、タンコブはできてないと思うよ」
「そう?」
寝坊君は相変わらず無表情のままで頭をさすっている。
なんか軽く罪悪感感じるな。
「ごめん。俺が起こしそうとして叩いた」
…正直者だな~私って。
「そう。ありがとー」
「………は?」
なにこの子、叩かれてありがとーって何?
「起こしてくれたんでしょ?」
寝坊君はそこで初めて表情を変え、口端を上げた。
…まさに小悪魔的笑顔。
すぐに無表情に戻ったけどね。
「…まぁ。でも頭ごめん」
「いいよ。そーでもしないと俺起きないから」
確かに起きなさそうだったもんね。
「てゆーかさ、アンタ誰?」
…言われて気づいたけど、まだ私も寝坊君の本名知らんかったわ。
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