五年後の、手紙

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あたしは手紙を握り締めたまま、夏の夕暮れを走った。 五年前にポストに投函された封筒はセピア色に色褪せていた。 ピンヒールの足が痛い。 豆が潰れたみたいだ。 それでも構わなかった。 今走らなきゃ、後悔する。 涙が、止まらなかった。 ・・・ねぇ、悠哉。 あの日あの時叶わなかったあたしの恋だけど、 本当のあなたの気持ちは違ってたんだね? 手紙に書かれた悠哉の本心、信じていいんだよね? 見慣れた道を走る。 悠哉の家を目指して走る。 ねぇ、悠哉。 今度こそ、伝えるよ。 「今もあなたが好き」って。 だから神様、どうか、もう少しだけ時間を下さい。 あたしを悠哉に会わせて下さい。 お願い・・・
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