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午後11時過ぎ…。
いつも捜査会議をする部屋に入ると、みんなせわしなく動きざわついていた。
「先輩!」
壮介を見つけた相葉が、駆け寄ってきた。
「おう、相葉。どんな事件が起きたんだ?」
「誘拐事件です」
「誘拐?」
「はい、誘拐されたのは江本製菓会社の社長の江本弘明氏です」
「それで、身代金の要求は?」
「いえ、まだありません」
「そうか…それで誘拐された時の状況は?」
「えぇ、どうやら入浴中に攫われたようですね。奥さんと長女は後ろ手に縛られトイレの中に閉じ込められたようです。その後、浴室に侵入、拉致といった感じですね」
「なるほど…で、犯人はどうやって侵入したんだ?玄関の鍵はかかってたんだろ?」
「それなんですが…合い鍵を使ったようです」
「合い鍵?」
「はい、江本宅の近くに別宅があるんですが、そこには江本の70歳になる母親が一人で住んでいたそうです。まず犯人はこちらに侵入して母親を縛りあげ、持っていた合い鍵を奪ったみたいですね」
「そうか…それで、江本宅には誰か行ってるのか?」
「はい、数名の捜査員が向かったようです」
「なら、今は犯人からの要求待ちか…」
「えぇ、そうなんですが…江本宅には誘拐されてから、数回に渡る無言電話があったようですね」
「無言電話?」
「はい」
「そうか…」
壮介は何か考えている様子だ。
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