《お別れのウタ》

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 退院して数日がたった……  会社は、もちろん首になった  何の連絡もしないで  休んだんだもの当然だった  だから働く気にもなれずに  部屋の窓から毎日…  外ばかり見ていた  寒くなったけれど……  冷たい空気が心地よかった  手首に巻いた包帯は…  まだ外せずにいた。  部屋の窓から見える空は…  …今にも…  雨が降り出しそうで…  「あっ!そうだ…傘…!」  借りてた傘を返さなければ…  私は久しぶりに…  あの店まで出向くことにした  冷たい風に…ゆっくりと…   雲が…  押し流されて行くのを見て  冬の香りがするなぁ…   なんて…  そんなことを思いながら……  彼と歩いた街並みを…  一人で歩いてた…  彼とさよならした…お店の前  大きく息をして…‥  お店の階段を上がって…  扉に手をかけると……  聞き覚えのある…  そう…彼の声が聞こえた…  少しだけ…期待した……  でも…彼は…  あの女と一緒にいた……  思い出の場所で…   …私が…  苦しんでいる時も……  ここで…会ってたんだ!  私は嫌な女になっていた…  店の中に入って行き……   彼に…傘を…  思いっきり!叩きつけた!  「何するんだ!!」  「あなたなんか!    あなたなんか!」  私は…店を飛び出していた…
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