バイト

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「あ…」 「あぁ!?」 加持と広泰、二人が顔を合わせたのは… 居酒屋の裏、スタッフルームなる狭いロッカールームで。 「うそだろ?」 新人てお前かよ、と加持が広泰を指差した。 「それは、こっちの台詞だ。」 既に、店特有の藍色の前掛けを腰に巻いている加持の姿は、ここの店員そのもの。 「マジかよ…おい」 「何もんな、凄ぇ嫌そうな顔しなくてもいーじゃねぇかよ…」 まるで、凄く不味いものでも食べたかのような顔の加持。 「バイクの修理代稼ぐまでだからよ、よろしく」 「えー…」 嫌そうな顔の加持の後から、他の店員が顔を出す。 眼鏡を掛けた気の優しそうな女の子。 「あ、新人さん?加持くん、同い年くらいだから、いろいろと教えてあげてね?」 にっこりと彼女は笑う。 マジかよ!?オレが!?と加持は項垂れた。 あぁ、自覚する。 こんなにも好きだったんだと。 「皿でも洗っとけ」 カシャンと水をいっぱいに張ったシンクへ加持が、料理やつまみが乗っていただろう皿を入れる。 加持が近寄れば、ふわりと一瞬かすめる香水の匂い。 自然と目が彼を追っていると気付いて自覚する。 専用の藍色の前掛けとほぼ同色のTシャツに、三角巾代わりのバンダナ。 制服とは違うその格好に どきりとし… ガチャンと床で音がした。 「あ!バカ!何やってんだよ!」 「あっ!」 床に落ちて割れたのは白い皿。
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