愛のちから

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「大地っ!!奇遇だなっ!!こんなとこで」 振り返りにっこり笑う木下。 「……木下くん…」 金子は目をパチクリ。 それから斜め後ろを見上げる。 「会いに来たわけじゃねーし、偶然だからいーだろ?」 あそこの歩道橋からわざわざこの為に? 「…っうげっ…!」 金子へ歩み寄ろうとした、木下が足から崩れたのは直後だった。 右足骨折。 病室に吊された痛々しい木下の足。 それと似たようだがベッドサイドの円椅子に座る金子の頬にも大きな湿布に右手には包帯。 「木下くん馬鹿でしょ?」 普通はあの高さなら飛び降りない。 しかも飛び降りた後、2人倒したりしない。 「…ひでーなぁ、馬鹿じゃねーよ。大地が会ってくれねーからだろーが」 唇を尖らせじとりと金子を恨めしそうに見る木下。 「まぁ、こんなんじゃ…ますます会えねーわな…」 だって大地が見舞いに来るわけがない。 ふんとそっぽを向く木下。 「…まぁ、頼んではないけど…助けて貰ったんだから見舞いくらいは来てやってもいーけど…」 呟くようだった。 聞き漏らす訳のない木下はぐるりと振り返りパシリと金子の手を取る。 「マジで!?っ」 犬だったら尻尾をパタパタさせるそんな勢いで木下の目が輝いた。 「ちょっ…離しなさいよ…」 殴り過ぎたせいで金子の腕力は無いに等しかった。 掴まれたままグイっと木下は金子を寄せる。 なにせ上半身は元気なのだ。 上部を高くしたベッドに横になる木下の胸元に金子は引き込まれ、直に木下の心臓の音が聞こえた。 とくりとくりと胸についた右頬に振動が伝わる。 「…ちょっと…木下くん…」 カーテンで仕切られていて他には見えないだろうが。 この体勢…。 「ごめん、大地もうちょっとだけ…」 いつになく、低いトーンのそれに、金子は思わず抵抗を忘れた。 とくとくと耳に響く心音。 「…なぁ、オレ、確かにあっちいってすぐ彼女できて…こっちきて、また大地が好きだとか都合いいかもしれねー…しれねーけど…やっぱり大地が好きだ。」 ふんわりと金子の頭に触れる木下の唇。 「信じらんねーかもしんねーけど…やっぱ大地が好きなんだわ…オレ」 とくとくと鳴る心音が早くなる。 それが木下のものか自分のものか金子はわからなくなっていた。 「なー…辻、オレら帰ったほーがいーかな?」 「んー、ぁあ、だな」 病室の外廊下で。 立ち尽くす辻と本城だった。
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