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夏休みの補習真っ只中、藤間は先生の話も聞かず窓の外をぼんやりと眺めていた。今の彼の頭の中は「暑い」「良い天気」と、それだけしか考えていない。彼の成績は対して良い訳でも無く本来ならもっと授業を真面目に受けなければならないのだが、彼にとってそんなことはどうでも良かった。
「おい、裕司…ぼーっとしてたらまた怒られんぞ」
横から彼の友人である九野に後ろからそっと耳打ちされた。だが彼は、あぁとだけ言ってそのまま外を眺めている。九野は呆れるでも怒るでもなく『いつもの事』として済ませ、ノートを取る作業に戻った。
(つまんねーなぁ…アイス喰いてぇ…。)
ぼんやりとそんな事を思った時だった。空気が若干揺らめいている様に見えるのだ。彼は一瞬太陽光の暑さで揺らめいたのかと考えたが、明らかに異質な感じで普通ではなかった。彼が消しゴムを千切って外に投げてみると、揺らめく空間が水を垂らした水面の様に波打ったのだ。
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