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屋上への階段を上がり、蹴り破るように扉を開いた。
「はっ」
夕焼けに染められた屋上を駆け、手すりを飛び越え、空と屋上の境界線へとおりたった。
そこから下を見下ろす。
「――っは、はっ。
間に合ったか」
そう、間に合った。
直接校舎裏に回るよりは時間が掛かったが、間に合ったのだから問題は無い。
いや、そもそも状況を正しく確認するためには、ここに来なければならなかった。
「やっぱり、多対一か」
一二三、ハイルと合わせて四人か、内一人は短い木々の茂みの中に隠れていて、同じ高さから見たのでは分からなかっただろう。
不意を打つ気がありありと感じられるけど――とにかく、まだ戦闘にはなっていないようだ。
「……さて、そろそろ大半の奴等が下校した頃だな」
下の方から、やはり薄笑いを浮かべているハイルの声が聞こえた。
「…………そう、ね」
下を向いたままのユキリの声。
その声には感情が欠けていて、だけど、なんとなく悲しんでいるように感じられた。
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