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「クゥ、クゥ」 「ん…」               さっきから何度も押し付けられている硬い感触と、聞き慣れた甘えている鳴き声に今日も至福の眠りは終わりを告げた。                「はぁ…サディス、頼むからたまにはゆっくり寝かしてくれぇ…」               「きぇぇぇぇぇぇぇぇ!」               半べそをかくレイルをよそにサディスは嬉しそうに甲高い奇声を上げる。朝からはた迷惑だ。 決まって八時頃に奇声を上げるので近所では時計代わりになっているらしい。 「わたしゃ八時に店開いてるから、いつもいつも助かってるよ」     なんてことを言われたこともある。   サディスのおかげでそのおばさんには値引サービスをしてもらっているので、結果オーライってことで心の中で密かに感謝することにした。               「おまえは気楽でいいよな…」 「キュウ?」               首を傾げるサディスの頭や背中をひとしきり撫でる。 背中や腹は硬い鱗に覆われていてゴツゴツするため、感触はあまり良くはないが、頭はふさふさの毛が生えているので気持ちいい。               「キュウ…」               気持ちよさ気な顔をしてしきりに腕に擦りつけてくる仕種が可愛くて、サディスをじゃらすことがいつの間にか日課になっていた。               「そろそろ、支度しないとだな」               素早く着替えると、二階の自室から一階のダイニングへと移動する。 サディスもその後をぽてぽてと着いて行く。 これもいつもの光景だ。                 「あ、レイちゃん♪おはよう♪サディちゃん、お疲れ様☆」               アイルは朝食を作っていたらしく、おたまを片手に持って笑顔を咲かせている。               「…お母さん、相変わらず朝から元気いいね」               半ば呆れたように言うとアイルは開き直った。               「素晴らしき今日が始まるんだもの!元気に行かなくちゃ!」               レイルは煮豆スープを飲みながら、はいはい、と適当に相槌を売ったが、心の中では酷く重いものを感じていた。 それはこの世界の理のせい。               
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