一話

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一時期「友達さん」という幽霊の噂があった。 ひとりで歩いているとどこからともなく現れて「友達ちょうだい」というのである。 「うん」「いいよ」と答えると連れて行かれず、 「やめて」「いや」と答えると連れて行かれるという話しだった。 「友達さん」の容姿はなぜかはっきりしなかったが、ちょくちょく「この店のあたりで見た」「友人の弟が見た」等の体験談もあった。 私の学校の知り合いもそれに遭遇したらしい。 学校帰り、ひとりで歩いていると前方から同い年くらいの少女が現れ「友達ちょうだい」と言ったらしい。 知り合いはまだ「友達さん」の噂は知らなかった。 彼女はとっさに「私には友達なんていないけど」と答えた。 そうすると「友達さん」は「そう」とだけ答えて去っていったそうだ。 あとでその噂を知った知り合いは「知ったたんならわざと嫌な奴の名を言って連れて行ってもらったのに」と笑いながら言った。 私はもし自分が「友達さん」に会ったら彼女を連れて行ってもらおうと思った。 「うん」「いいよ」と答えると連れて行かれず、「やめて」「いや」と答えると連れて行かれると言う話しだった。 連れて行かれるのは話し掛けられた奴ではなくそいつの友達ね。
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