プロローグ

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  自分の耳を疑った。 正確には耳でもない。じゃあ、何なのか、と問われても俺はその答えを持っていなかった。 ただ、言葉をなくして華月(かづき)と顔を見合わせるしかなかった。 「颯(そう)。あたしのほっぺた、つねって」 華月の言うとおり、目の前のそれから目を離さずに、華月の頬を軽くつねった。 小さく、うっ、という華月の声が聞こえる。 「痛い?」 「痛い……」 華月はとても痛そうに自分のほっぺたを擦っている。 「……なんか俺もほっぺた痛くなってきた……」 「颯のほっぺ、私つねってないって」 「そうだけど。なんとなく」 そう言って俺も、自分の頬を手でさすった。 「ねえ、颯」 「うん、かづ」 信じられる? と言いたげな華月の顔が横にあった。 いったい、何がどうしてこうなってるんだろう。 というか、今何が起こった? 信じられないけど、でも、俺だけが聞いたんじゃない。華月もちゃんと聞いていたのは華月の反応から明らかだ。
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