1・猫の恩返し

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ただでさえ、注意力散漫な華月が考え事をしているときは、“歩く凶器”か“災害製造機”か“しゃべる台風の目”のどれかで表現できる気がする。 だから、未然に防ぐのが最大のポイントだ。 「ぼーっと走ってるとコケるぞ」 「うるさいな……」 俺が華月に声をかけると、えらく不満そうな声が返ってきた。 なんだ? 反抗期か? 今朝は甘ったれて自分にへばりついていた華月が急にヘソを曲げた理由が、とんと思い当たらなくて、自然に眉間にシワがよる。 内心、今までにない華月の態度に、俺は困惑していた。顔には出さないから、華月は気がついていないだろうが……。 これが、お年頃ってやつか?  
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