1・猫の恩返し

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自分もその“お年頃”なはずなのに、周囲の友人や、親戚を含む大人たちは 「颯(そう)君は落ち着いているね」 「颯君はかづちゃんの父親みたいだね」 などと言う。 実際、最近華月は自分の娘なのではないかと思う時もある。 妻も居ないのに、子育てしている気分になる高校1年の健全な男子学生なんて、たしかに、老け込んでるのかもしれない、とたまに自分で思って落ち込む事もある。 そうなったのも、我が家の家族構成員が原因としか考えられない。 やることなすこと危なっかしくて見ていられないのに、自由奔放すぎてやたら手のかかる母。 そのDNAを色濃く受け継ぎすぎ、というか、父の遺伝子どこへいったんだ、と思わず突っ込みたくなるような姉。 苦労性、かつ心配性、かつ仕事で多忙を極める父の気苦労を少しでも軽減させてあげよう、と、父の代役を勤めるのは自分しかいないのだ、と覚り切ったのは、4歳のことだったと記憶している。 そういう自分も父のDNAを色濃く受け継ぎ過ぎたのかもしれない。
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