1・猫の恩返し

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危なかったね? あぁ、そらもう命の危険だったさ。 でも、ここでそう俺が答えても俺と華月の“危なかった”対象が違う。 絶対だ。 ほっとした後に、くるのはなぜ苛立ちなのだろう。 俺の額には恐らく青筋がたってるに違いない。 「……わかってないだろう、華月」 「え? 猫、無事だよ? ほら!」 華月は、自分の腕の中の白い猫の首根っこを、わしっとつかんで、俺の目の前にぶらりと宙ぶらりんな猫を見せてみせた。 いつも、華月はこうだ。やっぱり何も分かっちゃいない。 俺の心臓が止まりそうなほど、危なかったことも。 現在進行形で、俺の怒りメーターが急上昇していることも。 「……今、その猫のおかげで、華月が引かれそうになったの」 「え?」 華月は思っても見なかっただろうことを言われ、目を見開いた。
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