1・猫の恩返し

11/22
前へ
/325ページ
次へ
華月はとりあえず猫を抱えて走り、おかげで両手がふさがったことを理由に、華月の分の鞄を俺が抱え、先を急いだ。 そして、今日も今日とて、近道だ、といいながら華月を先頭に、川原沿いの道を走り抜けていた。 「ていうか! 華月!」 川原沿いの細い砂利道を一列になって走りながら、いっこうに猫を手放そうとしない華月に声をかけた。 「それ、学校まで連れてく気か?」 とたんに、ぴたっと華月が足を止めて、俺はぶつかりそうになりながらも、何とかそれを避ける。 「急に止まるな!」 そんな俺の抗議なんぞ、華月の耳には届いてない。 華月は、そっとその猫を地面に下ろした。
/325ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2832人が本棚に入れています
本棚に追加