1・猫の恩返し

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俺たちが所属する水泳部の練習が終わり、家路につく頃には夜の9時を回っていた。 今日は、月に1度のプールの清掃日で、これは華月や俺を含む、1年生全員の仕事だった。 足腰を鍛える、という名目の元、水を抜いた50メートル温水プールの掃除をさせられる。俺も華月もクタクタになりながら、校門を抜けた。 「かづ、寝るなよ」 眠そうな顔をしながら、フラフラ歩く華月を見ながら、俺はそう声をかけた。 「寝てない……」 「鞄、ちゃんと持って、ほら」 今にも華月の手から零れ落ちそうな鞄を、持ち直させてやる。しかし、その手は力なく、反応も鈍い。 これは、急いで帰らないと、歩きながら寝かねない。さすがに、今日は華月をおぶって帰る体力は残されていなかった。 「かづ、頑張って」 そんな俺の声に、よくわからない言葉で応答する華月に、いよいよ身の危険を感じた。 絶対、寝る! 15年の経験と俺の直感がそう言っていた。  
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