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当然、日が落ちたらその道を使うことは、幼い頃から禁じられていた。
もちろん、女の子の華月がそこを一人で通るなんてことは、決して、決して、決してあってはならないと、我らが父上がそれはもう、半ば泣き落としのように、口うるさく、懇切丁寧に説明して見せたものだった。
しかし。
今日はこんな状態だし、一刻も早く帰りたい。
俺は心の中で、父にごめんと一応謝って、左手に華月と自分の鞄を抱え、右手で、すでに半分以上まぶたが閉じている華月の腕をつかんで、ずんずんとその川原沿いの道を進んでいった。
薄暗いその道の木々は、1ヶ月前までは桜の枝にたくさんの美しいピンク色の花を付けていた。
二人で遅刻回避のための走り込み(華月はこれを体力トレーニングのための早朝マラソンなどと言うが)の最中に、毎日のようにその花びらに見送られながら、花見を満喫しつつ登校したものだった。
今は、その枝にはたくさんの葉が茂っている。
それがまた、川原沿いの道を進む俺たちから光を奪っていた。
幼い頃に植えつけられた約束を破ることへの罪悪感か、それとも暗闇の恐怖からか、自然と足は速くなっていた。
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