1・猫の恩返し

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華月もいつの間にか眠気が吹っ飛んだようで、足取りもしっかりしている。しかし、逆に暗闇の恐怖が華月を襲い始めているようだった。 「颯……」 華月が声を震わせている。華月の恐怖が俺がつかんでいる華月の腕からも伝わってくる。 「早く、帰ろう」 「う、うん」 「暗いから、転ぶなよ」 そういって、華月を振り返った時だった。 俺の横目に、何か白いものがぼんやりと、目に飛び込んできた。 なんとなく、気になってそっちを見る。 急に足を止めて、川原のほうを眺める俺につられて、華月もそちらに目をやった。 「あ……昼間の……」 華月がつぶやいた。 こちらからすこし離れた大きな桜の木の下に、ぼんやりと白い猫の姿が映し出されていた。
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