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華月もいつの間にか眠気が吹っ飛んだようで、足取りもしっかりしている。しかし、逆に暗闇の恐怖が華月を襲い始めているようだった。
「颯……」
華月が声を震わせている。華月の恐怖が俺がつかんでいる華月の腕からも伝わってくる。
「早く、帰ろう」
「う、うん」
「暗いから、転ぶなよ」
そういって、華月を振り返った時だった。
俺の横目に、何か白いものがぼんやりと、目に飛び込んできた。
なんとなく、気になってそっちを見る。
急に足を止めて、川原のほうを眺める俺につられて、華月もそちらに目をやった。
「あ……昼間の……」
華月がつぶやいた。
こちらからすこし離れた大きな桜の木の下に、ぼんやりと白い猫の姿が映し出されていた。
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