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「君、待ってたんだ!」
そういい終わるが早いか、華月が俺の手を振り解いて、猫の方へ、つまり、川原の方へ走り寄っていった。
「華月!」
ぎょっとして、華月を追いかける。
「待て!」
華月の腕を再びつかんだときは、すでに猫の前にたどり着いていた。
華月はそんな俺をよそに、実に嬉しそうにこちらを振り返った。
「颯、この子昼間の子だよね」
「そうかもね……」
正直、そんなことはどうでもよかった。
早いところ、この道から抜け出して、家に帰りたい気持ちが大きかったからだ。
それなのに、華月は、今まで自分で持ちもしなかった、自分の鞄を俺から奪い取って、ごそごそと鞄の中を漁(あさ)りだす。
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