1・猫の恩返し

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「君、待ってたんだ!」 そういい終わるが早いか、華月が俺の手を振り解いて、猫の方へ、つまり、川原の方へ走り寄っていった。 「華月!」 ぎょっとして、華月を追いかける。 「待て!」 華月の腕を再びつかんだときは、すでに猫の前にたどり着いていた。 華月はそんな俺をよそに、実に嬉しそうにこちらを振り返った。 「颯、この子昼間の子だよね」 「そうかもね……」 正直、そんなことはどうでもよかった。 早いところ、この道から抜け出して、家に帰りたい気持ちが大きかったからだ。 それなのに、華月は、今まで自分で持ちもしなかった、自分の鞄を俺から奪い取って、ごそごそと鞄の中を漁(あさ)りだす。
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