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問題は、そのあとの台所。
ガスレンジの上の換気扇に何か茶色い5センチ大の物体が、べとっとへばりついて、これは何だろう、としばらく考え込んでいたら
「あ、味噌がね、上に飛んじゃったの」
と飄々と言われた時には、
「へー……味噌なんだ、これ……」
と切ない気持ちになったものだった。
そのあと、どうして味噌が換気扇につくのかについて考えながら、無言で1時間かけて台所をピカピカにした息子に、父は軽く肩をぽんぽんと叩いて、ため息を一つ漏らして自室に戻っていった。
今だ、その怪奇現象については結論がでていない。
母上はどうやら、普通の市販の味噌を、空飛ぶ味噌に変えてしまったらしい。
その不思議パワーを華月に遺伝させないでほしと心底思ったが、これは俺のわがままなのだろうか。
きっと、今も台所は大惨事か怪奇現象を迎えていることだろう。
そして、クタクタな現状に、追い討ちを掛けるようなその台所掃除が待っているかと思うと、早いこと帰って、ぴかぴかに片付けて、とっとと寝たい、というのが今の俺の切なる願いだった。
しかし、そんなことは、台所の惨事をまったく気にしないのと同じく、気にも留めていない華月は、この猫のことが気になって仕方ないのだろう。
助けたついでに、家につれて帰りたいと言い出さないか、内心ヒヤヒヤしてた俺がいた。
なぜなら、その華月が拾った猫の世話をするのは、当然、俺だからだ。
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