1・猫の恩返し

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  「は?」 先に声をあげたのは華月だった。 「今、颯、なんか言った?」 「いや?」 俺たちは顔を見合わせて同時に視線を足元に移した。 そして、再び顔を見合わせて、はは、っと笑った。 そんなまさか。 おそらく華月も同時にそう思ったに違いない。こういう時は双子であることを実感する。 でも、すぐにまた、同時に俺たちは顔を凍りつかせた。 ───オマエ ワタシヲ タスケタ。ダカラ オマエヲ タスケル。 自分の耳を疑った。 正確には耳でもない。じゃあ、何なのか、と問われてもその答えを持っていなかった。  
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