1・猫の恩返し

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まだ新しい制服の裾を翻しながら、華月が俺の前を走っている。 華月と同じ近所の高校へ通うようになってから1ヶ月ちょっと。俺と華月にとっては、いつもと変わりばえしない月曜日の光景だ。 それはもうランドセルを背負いだした時から、幾度となく繰り返されてきた。 こういう時、先頭を走るのは、決まって華月の方になる。 いつから、そうしたのかもう思い出せない。 それまでは、「待ってよ~」と後ろから追いかける華月のことなどお構いなしに、どこへ行くにも俺が競って先頭を走っていた。 もう、あの頃とは違う。 俺が前を譲るようになった頃、「どうしたの?」と華月が不思議そうに問いかけてきたことがあった。
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