太陽と月の距離

日常

──── キーンコーン……

「そこまで！ 後ろの奴、集めろー」

鉄パイプ椅子に腰掛けていた教師が、チャイムを聞くやいやな立ち上がり、回収を促す。

一気に教室の空気が安息に和らぎ、誰もが胸中で呟いた。

これで終わった……。

ここ、桜ヶ丘学園の高等部において、中間テストという一つの地獄を乗り切った生徒達の、誰とも知れぬ溜息があちこちで零れる。

その中で一人、ベランダ側の窓際の席に座る女子生徒だけは表情が晴れていなかった。

座高は低い。机の下から見える足も短い。

栗色を少し黒へと濃くした色の髪は肩までのセミロングで、頬にかかる髪は内側にハネており、あとは毛先だけが外側に小さくカールするようにハネている程度だ。前髪の一部が小さく出ているのが可愛らしさを出している。

机に肘を乗せて頬杖ついたまま、茶色の瞳は憂うように伏せていた。可愛らしいはずの丸みのある目が伏せているものだから、端から見れば憂いを帯びているように見えるだろうが、彼女の眉間にはシワが出来ている。つまりは不機嫌。そういう事だ。

そんな彼女に近付いたのはクラスメイトらしき女生徒。快活そうなショートヘアを揺らして、笑顔で声を掛ける。