月夜森の童話

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白いウサギは森の中を走りぬけ、また消えてしまった。 「…ウサギさんは足が速くて…追いつけないわ…」 息を切らしてアリスは立ち止まった。 振り返ると植物園は見えない。 まだそんなに離れていないはずなのに、植物園は何処にも見えなかった。 アリスはため息をつくと、また歩き出した。 月は相変わらず丁度上で全てを蒼く照らしている。 「私、このまま帰れないんじゃないかしら?」 呟いた時、あの猫がまた木の上にいるのが見えた。 ずっとそこでアリスを待っていてくれたようだ。 アリスが自分に気が付くと、猫はするりと木から飛び降り、歩き出した。 アリスは小走りで猫に追いつく。 「猫さん、待っていてくれたの?」 訊ねると、猫は頷いて「にゃあ」と鳴いた。 アリスが薔薇を好きなのを知っていたようだ。 「寄り道してくれたのね」 アリスは嬉しそうに笑うと、猫もそれが嬉しかったのか喉を鳴らした。 小さな川を渡り、花畑を通り、猫は立ち止る。
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