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少し口が大きい気がするが、よく見るととても愛らしい目をしている。
「にゃあおん」
猫はまるで猫じゃないかのような声で鳴く。
オルゴールのような、どこか機械的な声だ。
「ねぇ、大きな猫さん。私迷子なの…。あなた出口を知らない?」
しゃがんで訊ねると、猫はじぃっとアリスを見つめた。
それから小首を傾げる。
まるで考えているかのようだ。
そして猫はパッと立ち上がると歩き出した。
「あ!」
アリスは慌てて後を追う。
猫は時々後ろを振り返り、アリスがちゃんと自分の後を付いて来ているか見ながら歩いた。
「この公園は大きいのね」
呟くと、前を歩いていた猫が「にゃあ」と鳴く。
そして数度頷いた。
まるで人の言葉を理解しているみたいだ。
不思議な猫はあちらこちらを曲がって歩き進んでいく。
そして大きな植物園の前でぴたりと立ち止まった。
アリスを振り返り、また鳴く。
「ここは…お花がたくさん咲いているところね」
アリスはこの植物園が大好きだった。
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