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珍しい花も、一般的に良く見られる花も、あちこち惜しみなく咲いている。
猫は植物園の入り口をすり抜け、中へ入って行った。
アリスは慌てて後を追う。
『閉店』と書かれたプレートをくぐると、花は眠っているのか蕾になっていた。
「今は夜だもの。しょうがないわね…」
ちょっと残念だったが、猫は立ち止まらず歩いて行くので付いていった。
植物園の中央。薔薇の間で、猫は立ち止まった。
アリスを振り返り、ちょこんと座る。
アリスもそれを見て立ち止まった。
「昼間にはたくさんの薔薇が咲いて、とても綺麗なの!私、ここが特に好きなのよ」
嬉しそうなアリスに、猫はぐるぐると喉を鳴らした。
そしてまた機械的な声で「にゃあおん」と鳴く。
蒼い月が丁度薔薇の間の上にあり、薔薇の蕾が蒼く染まっている。
と、猫がひらりと薔薇の木へ飛び乗った。
棘が刺さらないか心配すると、猫は器用に棘を避け、一番高い鉢植えまで上って行った。
「にゃあおん」
また一声鳴く。
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