月夜森の童話

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すると薔薇が見る見るうちに咲き始めた。 蒼い月に照らされた薔薇は蒼く光り輝いて咲いていく。 やがてアリスの周りは蒼く輝いている薔薇でいっぱいになった。 「…綺麗…」 アリスは薔薇を見つめて思わずそう呟いた。 昼間には真っ赤な薔薇だったのに、今は蒼い色以外は見当たらない。 全てが月の色に染まっていた。 とても素晴らしいプレゼントに、お礼を言おうと見上げると猫はいなくなっていた。 「猫さん?」 呼んでみても猫は出てこなかった。 しばらく薔薇と月を見上げ、座っていると、公園の入り口で見かけた白いウサギが蒼い薔薇の間から顔を出した。 「まあ!ウサギさん!」 アリスは見つけるやいなや立ち上がる。 ウサギはまた小首を傾げると、走り出した。 アリスも走り出す。 ウサギは走って、走って、やがて植物園を抜けてしまった。 植物園を抜けるとまた森が続いている。
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