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月子は、ひとりでも楽しそうに遊んでいた。
誰もが黙ったまま、月子をじっと見ていた。
「あ…もう、帰らなきゃ…」
智史が携帯の時間を見ると呟き、駅へと歩きだした。
「じゃ、僕も…」
と、義人も言うと智史の後を追う。
僕と慎也だけがそこに残った。
月が、白い光を放ち、月子の身体に降り注ぎ、月子は軽々と跳ぶ度に、夜空に舞い上がってしまいそうな感じがした。
慎也の爪先が、苛々と、気持ちを表しているかのように、トントンと動いていた。
僕は携帯で時間を見る。
あれから三十分。
慎也は焦っている。
「くそっ」
慎也はそう言うと、ザッと茂みを蹴り「もう時間がないや、じゃあな」
慎也は立ち上がると、駅へと走り出した。
僕は、慎也の後ろ姿を見ると、月子へと目を移す。
「…よかった」
僕は心の中でそう呟きながら、胸を撫で下ろした。
僕は、月子のいる公園に背を向けると、もうすぐ来る電車に乗ろうと駆け出した。
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