僕等

2/2
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「おい、健雄。おまえどうだった?」 「ん?あ、ああ。まあまあかな」  僕等はこの間の塾内テストの成績を見せ合っていた。  小学五年生。ここにいる僕も含め、五人は皆、同じ学年だ。  僕と慎也と智史は同じ学校で、司と義人は違う学校に通っている。  中高一貫教育の学校に入学する為に、小学四年から塾がかわった。  学校から帰ると宿題をやり、カップラーメンを啜り、通信教育の問題を解く。 母さんが作ってくれたお弁当を持って塾へ行く。塾での休み時間にお弁当を食べ、家に帰るのは夜だ。  こんな僕等を、大人は可哀相だと言うけれど、僕はそんなに苦だとは思っていない。  大人が思う程、僕等は子供じゃない。  全部が全部とは言わないけれど、中には辛くて苦しくて、誰にも言えずに自殺しちゃう子だっているんだから。  僕は、この小学生の受験戦争をゲームだと思っている。  親が思う程、僕自身真剣には考えていない。 『親の心、子知らず』なんて言葉、嘘だよ。今時言うなら『子の心、親知らず』って言うんだと思う。  ここにいる五人共、そんなふうに大人を見ているところがある。  司は例外だけどね。司はママが恐くて仕方ないんだ。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!