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「おい、健雄。おまえどうだった?」
「ん?あ、ああ。まあまあかな」
僕等はこの間の塾内テストの成績を見せ合っていた。
小学五年生。ここにいる僕も含め、五人は皆、同じ学年だ。
僕と慎也と智史は同じ学校で、司と義人は違う学校に通っている。
中高一貫教育の学校に入学する為に、小学四年から塾がかわった。
学校から帰ると宿題をやり、カップラーメンを啜り、通信教育の問題を解く。 母さんが作ってくれたお弁当を持って塾へ行く。塾での休み時間にお弁当を食べ、家に帰るのは夜だ。
こんな僕等を、大人は可哀相だと言うけれど、僕はそんなに苦だとは思っていない。
大人が思う程、僕等は子供じゃない。
全部が全部とは言わないけれど、中には辛くて苦しくて、誰にも言えずに自殺しちゃう子だっているんだから。
僕は、この小学生の受験戦争をゲームだと思っている。
親が思う程、僕自身真剣には考えていない。
『親の心、子知らず』なんて言葉、嘘だよ。今時言うなら『子の心、親知らず』って言うんだと思う。
ここにいる五人共、そんなふうに大人を見ているところがある。
司は例外だけどね。司はママが恐くて仕方ないんだ。
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