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「僕、また怒られるよ。二十番に入っていないもん」
司が震える声で呟いた。
司のママは、最低でも二十番以内に入っていないとひどく怒るらしい。すぐに手が飛んでくるらしく、明日の朝の司の頬には痣があるかもしれない。
この中で一番成績が良くないのも司だ。他の四人はかなり出来るほうだ。
司の呟きに応えるものは誰ひとりいなく、二、三秒の沈黙の後、再び三人は自分達の成績を見せ合い始める。
僕は一人うなだれている司を見るのをやめると、夜空にデンと浮かぶ、綺麗な月を見ていた。
僕らには他人を慰めるという言葉がインプットされていない。
それは大人がしたことだ。
僕は月明かりに照らされた公園内を見渡した。
どのベンチにも若い男と女が座っている。
子供達に勉強を強いらせて、大人達は一体何をやっているんだろうね。
僕たちは大人達が思うよりも、ずっと世の中を知っている。
ジャングルジムの上に、月がいつものように輝いている。
そして、その月の中に、女の子の黒いシルエットが浮かんだ。
僕は、はっとして一瞬目を疑った。
けど、それは、夢とか幻なんてものじゃなく、本当に起こった出来事だった。
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