0人が本棚に入れています
本棚に追加
けれども、それは真実となって周囲の景色を変え始めた。
一つ一つ、儚く散り始める草花。
ぽつりぽつり、スケッチブックを湿らせる彼女の涙。
暖かな大地は、冷ややかな感触のあるアスファルトへと姿を変える。
彼女の表情から、夢や希望どころか、憎悪や悲しみも消えてしまった。
「夢を叶えたいと願う、それこそが私の存在意義だったの……」
甘く、切ない、夢を見るようなささやきは、
鬼のものとは思えない程可憐な嘆きであった。
少女は周りの風景と共に飲み込まれていった。
後に残されたのは、少女の書き綴ったスケッチブックのみ。
少女が居なくなった後、灼熱の太陽は彼女の持つスケッチブックを照らした。
彼女の涙によって濡れ、太陽の光によって浮き出された絵。
それは私が過去に強く願っていた夢だった。
冷たい無機質な絵の裏に隠されていたのは、
狂気的なまでに夢を渇望する思いだったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!