対話の場

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 少女の絵は抽象的であった。  確かにそこには花や木などの物質が描かれているが、  とても淡い存在として描かれている。  そして、無機質な物質などは一切形を留めていない。  代わりに淡々とした冷たい色が、  無機質な物が置かれていた場所を彩っていた。  元来白かった用紙の大半は暖色で覆われている。  まるで春の温暖な気温に包まれるかの様な配色と繊細なタッチの中で、  密かに、気づきにくい程に、淡く暖かな色に居場所を奪われ、  冷ややかな彩りが静かにその居場所を伝えている。  彼女にとってはそれが、  目の前の光景を見て感じた心模様なのだろう。  驚くべきことに、  清らかな心は  人々が生み出した物質を排除しようとしていた。  そして私にとってその事実は、  まるで自分自身の居場所が失われた時の感覚を思い出させるものだった。  私は必死に夢を追いかけ続けていた。  そして、何かを生み出そうと必死になっていたが、  周りは私の夢など聞きやしなかった。  否。  私がそう思っているだけであろう。  しかし、そう思うだけで私の心は十分に荒んでいった。  その絵は、  私のその時の心境を表しているかの様に感じる。  何故なら、彼女によって変換されてしまった無機物は、  夢を叶えようと必死になって周囲から離れてしまった私の姿そのものなのだ。
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