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太陽の光が、初めて残酷だった。
安物のアルコールの香りに包まれた部屋で、ヤニのこびりついた薄汚れたカーテンをほんのりと明るく染めるそれは、誰がどの様な状態であろうとも無遠慮に主張するのだ。
――踏み出せ、と。
どのくらいか寝ただろうか?五分?十分?細切れに寝たような気もするし、そうでないような気もする。
手元にあるペットボトルをグイとあおる。ラベルには午後の紅茶のストレートティとあるが、中の液体は色だけは似ているが全く別物。リッター売りのウイスキー。水で割るのも鬱陶しく、原液のままのそれをグイグイと流し込む。
内臓をいくら虐めてみても、濃霧に覆われた脳はさほどの反応も示さず。
おもむろにベッドからおり、ユニットバスに入り、頭から水のシャワーを浴びる。
仕事に行かなくては。
不思議な事に、その時の俺は「休む」という選択肢は一切思いつかなかった。ただ、いつもの通りスーツに着替え、残酷に降り注ぐ太陽の下にその身を晒しては見たが、腕時計はまだ六時だと左腕で喚いていた。
知らん。
あの部屋にいたら、どうかなっちまう。
それから一週間、夜は二時間と眠れず、カロリーは、アルコールのみによって摂取していた。
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