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26日の真夜中、後1分で27日になる。
俺は、指定された場所に居た。
誰も居ないこの、公園。
高台の上にある公園だから、見晴らしが良い。
「後…10秒」
俺は、時計を見て、そう呟いた。
存在なんて、しないはずの彼女が…。
此処に来るという、保証はないし、それに彼女を装ってくる女かも知れないのに…。
いや、女という保証もない。
それなのに、俺は、此処に来た。
何故か、彼女に逢えると、そう確信をして。
「こんばんわ。こんな時間に、どうしたんですか?」
声が突然、聞こえた。
俺は、振り返らず前を見据えた。
「人を、待って居るんです」
大切な人を…。
「そうなんですか。偶然ですね。私も人を待って居るんですよ」
その女の人の声を聞き、俺は初めて、彼女を見た。
「ッ!?」
その女の人は、彼女にそっくりだった。
「此処、私が大好きな場所なんです。此処だと、良く街が見えるから」
ただの他人のそら似…?
でも、その声も、その髪も…、その瞳も…。
「そして、一番大切な人が、この街にいるんです」
何もかも…そっくりなんだ…。
「 沙羅 ?」
君の名前を呟いた。
「…やっと、気付いた。気付いて貰えないと想ったよ。翔」
沙羅 は、ゆっくりと振り返る。
俺は、思わず彼女を抱き締めた。
「やっと…ッ逢えた!」
沙羅 の腕が俺の背中に回る。
「逢いたかった、ずっとッ」
溢れる想い。
逢いたかった、人。
「私も、逢いたかった。翔に。今日、この日だけ、神様が許してくれたの」
沙羅 は、俺の耳元で囁いた。
「私、翔と出逢った時には、もう…死んでいたの」
彼女から放たれた言葉に、一瞬戸惑った。
分かっていた事なのに…。
身体が震える…。
「聴いて、翔。私の、過去を」
それは、君の願いだった。
俺は、君の言葉を素直に、受け入れた。
「私ね、……………」
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