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でも、 沙羅 は急にあの公園に来なくなった。
「発作を起こして、病院から出ちゃダメだったの。3日後に公園に行ったのに、貴男は来てくれなかった。
寂しかった。また、私は独りになったんだって…。とうとう、私は本格的に死に近付いていったの。
私が眠りに着く、前日、貴男から聞いた野球の試合だった。行きたかった、貴男が投げている姿をもう一度、見たおきたかった」
でも、観客に 沙羅 は、居なかった。
「行けなかったの。もう、私は、機械に囲まれていたから。永遠(トワ)の眠りに着く前に、一番最初に浮かんだのは、貴男の顔だった。
もう一度、見たかった、貴男の顔。幸せだったの。嗚呼、私あの時から翔の事好きだったんだって…。
私は後悔した。悔やんだ。自分の運命を。その後悔が、私をこの世に繋ぎ止め、貴男に逢えた」
そこまで、俺を…。
「でも、じゃあ、何で、あの時…初めて逢ったかのようにッ」
一度逢ってるなら、何で、あんな…。
「忘れて居るんじゃないかって、想ったの。だから、初めましてって。前に、翔言ったよね」
俺は、何をと首を傾げた。
「泣きそうな顔で笑ってるって」
俺は 沙羅 を見た。
「嬉しかったんだよ。でも…素直に受け入れられなかった。だって、前も、今も、誰一人見えない身体だからッ。
貴男に見えた事すら奇跡に近かった。嬉しかった。でも…やっぱり、君は私を覚えてはくれていなかった」
何で、俺は、忘れていたんだ。
ギュッと 沙羅 を抱き締めた。
「哀しかった。でもね…君に会えた事の方が、ずっとずっと、嬉しかった。
ずっと、伝えたかった。貴男に、伝えたい気持ちが合ったッ」
震える 沙羅 の肩。
泣いて居るんだ。
ずっと、独りだったから。
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