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「…おかしな事を言うね、君は。私は、消えないよ。まだ、消えない…」
苦しそうに笑う彼女。
何で、そんなに苦しそうなんだ…。
「何で、そんなにッ」
続きの言葉を紡ごうとしたら、唇に彼女の人差し指が当たる。
彼女を見るとその人差し指を自分の唇に当てる。
「内緒」
そう口ずさんで。
そして、彼女はスクッと立ち上がった。
「お、おい!ちょっと!!」
そのまま彼女は、俺が止めようとする言葉を聞かず、校舎内に入っていった。
それが、俺と彼女の出会い。
美しすぎる彼女は、その身体では支えきれない程の重いモノを背負っていた。
それが分かるのは、もう随分と後になってしまう…。
今の俺には、分からなかった。
彼女がどうして、あんな顔で笑っていたのか…。
* * * * * *
初めてだった。
あんな事を言われたのは…。
何故、彼には分かってしまったのだろう…。
『無理に、笑ってんじゃないのか?』
無理なんて、してないよ…。
有難う、心配してくれて。
でも、大丈夫だから。
『泣きそうな顔で、笑ってる』
泣けないの。
だから、笑ってるの。
『今すぐ、消えそうなんだ』
そんな事、あり得ないよ。
私は空気じゃないから。
今すぐ、消える事は無い。
有難う、高瀬君。
私の存在に気付いてくれて。
本当に、有難う。
私、嬉しかったよ。
君に会えて…。
「有難う、小坂君」
私は、詩を紡いだ。
もし、届くのなら、彼に…。
有難うと、届くのなら…。
この想いを、乗せて…。
風よ…、空よ…、雲よ…。
私の声を…、届けて下さい…。
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