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「何だ・・・双木かよ。驚かせないでくれ。」
彼は谷田塢 曉(やたむらさとる)双木とは小学校からの付き合いで、高校も同じだが、違う部活動だった。
曉は中学から続けているテニス部に所属していて、県大会に出場できるほどの腕前だ。
「・・・大変な事になっちまったな・・・。」
双木が切り出した。
「・・・そうだな。確か弓道部はシードだったか?」
「そうだけど?」
「良かったな。・・・俺達は初日に英語研究部とだ。」
「英語研究部?負けはなさそうだな・・・。」
相手が英語研究部ということは武器がないという事だ。
という事は無防備の相手を殺さなければならないということだ。
「俺は・・・正直言って怖いよ。人を殺すのが。・・・殺さなくちゃ自分が死ぬって思い続けても怖いんだ。自分が人を殺している場面を想像するだけで背筋がぞっとする。」
曉は肩を抱いて震え出した。
双木は曉が人を殺している姿を想像したくはなかった。
一瞬、曉がラケットの縁で怯えた顔を曉に向けた少年の頭をぶん殴り、殺す姿が脳裏に浮かんで吐きそうになった。
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