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駅に向かう最中に不意に声をかけられた。
「草壁先輩!ちょっと待ってください!」
双木が振り返ると、同じ弓道部の一年生の日下将房(ひのしたまさふさ)がこちらに走ってくるのが見えた。
「よぉ、将房じゃん。お前にもちゃんと連絡はいってたんだな。」
「当然じゃないですか。雪路先輩は部員全員のアドレスを知ってますよ。」
「マジか?いつの間に・・・。」
「何言ってるんですか?俺達が部活に入ってすぐですよ。」
「へぇー知らなかった。」
「・・・あの、草壁先輩。」
将房の声が先程よりも暗い調子になった。
「何ー?」
「先輩は今回のこと、どう思いますか?」
「そうだなぁ・・・狂ってると思うよ。本当に。」
双木は正直な意見を述べた。
「俺達にはまだ弓は引けませんが、できるだけ頑張ります!」
将房は双木を元気付けようと笑顔で言ったが、双木は複雑な気持ちだった。
「頑張らなくちゃダメなのかな・・・。頑張って人を殺すのかよ?」
「・・・すみません。」
「謝らないでくれよ・・・。」
重苦しい空気が二人の回りを取り巻いていた。
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