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双木はまだ夜が明け切る前に目を覚ました。
「とうとう来たか・・・。やるしかない。」
ベッドから身を起こして、普段あまり使わない学習机の上に新品のノートを広げた。
双木はそれに何か文章を書き始めた。
そして一頁にびっしりと書いて、体を背もたれに預けて大きく伸びをした。
「これでよしっと。」
その後、双木はノートを本棚に片付け、部屋のカーテンを開け放った。
ようやく昇り始めた太陽が露に反射して、きらきらと光り輝いていた。
落ち着かない双木は、運動用のジャージに着替えて軽く準備運動をして家を出た。
朝食まではまだ時間があった。
双木は以前河川敷に行った時と同じルートを走った。
疲れない程度に軽く。
前は曉が座っていた石の上には今は誰もいない。
少し肌寒い風が吹くだけで、時間が時間なだけに辺りに人の姿は無い。
「・・・。」
その淋しげな景色を暗い顔で眺めた双木は再び走り出した。
帰り道でも人に会うことは無かった。
家に帰ると母が朝食の支度をしていた。
帰って来た双木に気付いて振り返ったその顔には、くまが浮かんでいた。
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