無形

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  寒い…冷たい…   ここ何処…?   雨がしきりに叩き付けるアスファルトの上に 何故か真っ白な衣装のまま寝ていた   なんでこうなったか 思い出そうとしたけど 頭が痛むからやめた   「うわぁ…この服一番お気に入りのやつやのに」   とりあえず雨を避けるため 目の前にあった古い商店の 軒下に入った シャッターは閉まっていたが どうやらクリーニング屋らしい   「開いてたらどうにかなったかもしれへんな…あれ?」   ふと気がついた 財布を持っていない それどころか鞄ごと無い   「うわ!盗まれたんや!最悪やわー…」   RRR...   突然ポケットでケータイが鳴った これだけは無事だったようだ   よかったよかったと 冷えて震えた指で ケータイを取り出す   着信は出る前に切れてしまった   画面を開くと 『着信あり 12件』 全て井上からだった   「…わ!もしかしてもう仕事の時間!?」   焦りながらケータイで時間を確認した       「…なんやこれ」   表示されていた時間は   『0月0日 99時99分99秒』   気持ち悪くてすぐに閉じた   「き…きっと雨に濡れたからちょっとおかしなってるだけやろ!」       分かってた これだけ濡れたら 普通は電源も入らない   まだ人に一人も会ってないのも 気になってたし       そや 思い出した   俺     刺されたんやった  
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