無形

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  眩しい… 強い光が目に刺さるようだ でもさっきと少し違う   やっと目が開くと 白い天井が見えた   手が暖かい   ゆっくりと辺りを見ると 井上が俺の手を握って寝ていた   ガラガラとドアが開いて オカンが入ってきた   俺の顔を見るなり 目を大きくして駆け寄ってきた   「…あ…明!!目覚めたんか!!」   「ぉ…かん…」   「そうやで!あぁよかった!!エラいことやエラいことや!!」   酸素マスクのせいで 声がこもってるけど オカンは分かってくれた   そして、オカンの声で井上も起きた   「いしだっ…!!石田!!俺が分かるか?」   「わ…かるで…いの…うえ…」   井上がホッとしたように笑った   オカンは泣きながら 病院の先生を呼びに行った   「いの…え…」   「ん?」   「…ありがと…」   「……?…おぉ…あ、そや、話したいこと沢山あんねん」   井上からいろんな話を聞いた   俺は刺された後 手術してから丸4日も 眠っていたこと   ニュースで結構デカく 報道されてたこと   さっきまでオトンもいたこと       そして   俺に電話をかけ続ける 変な夢を見たこと       「俺と…どんな…話…したん…?」   「えっ!あぁ、あれやわ!あの…忘れた忘れた!」   顔を赤らめる井上を見て やっぱりあれは ただの夢や無かったんやなあと思った   「井上…好きやで…」   井上は一瞬不意を突かれたようで キョトンとしてたけど すぐ微笑んで 俺の眉毛の上あたりに そっとキスをした       後日   俺はもう元気になって 仕事にも復帰した     ケータイは普通に使えて 時間表示も直っていた   やっぱり夢やったんかな でもどっちにしい 井上がおらんかったら 俺はここにいない気がする       ふと着信履歴を見た   俺は井上のもとへ 走り出した       着信 0月0日 99時99分99秒 井上       ありがと 愛してんで、井上   ‐‐‐‐END‐‐‐‐
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