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ぱり、ぽり、ぱり。
少しずつ――一センチずつ、会長との距離が狭まっていく。あと五センチ、あと三センチ、あと一センチ――。
会長がゆっくりと瞳を閉じた。あわせて、何故か僕まで瞳を閉じてしまう。
そして、二人の唇が、触れ――
ぽきっ。
――ることはなかった。
ポッキーは、僕と会長の唇が触れる寸前のところで、折れてしまったらしい。
その時の僕は、どんな顔をしてただろう。たいそうマヌケな顔をしていたに違いない。
「…………」
まだ、胸の高鳴りは健在だった。もし、あのままポッキーが折れなかったら……。
「……あと、少しだったのに」
会長はどこか残念そうな表情、で小さく呟いた。
「……ねぇ」
「……は、はい?」
「もう一本……食べよ?」
余談だが、ポッキーの味は覚えていない。
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