黄泉行

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    「――で、あんたは此処に来たわけと」     「エえ」      やれやれといった感じで、少年の目の前にいる少女は頭を掻き、いつもならこんな面倒事には合わないはずだけどねぇ、と愚痴を一言こぼした。  少女は手に持っていた大鎌を持ち直すと、     「いつもならここで門前払いするとこだけど、さっきの話からして肉体に魂が縛られてるらしいし――調度良い機会だ、あの方直々にお説教をして貰った方がいいかもね」      あのお方とは、と少年は首を傾げる。     「ああ、あの方っていうのは閻魔様の事さ。って言っても、あんたは閻魔様が何なのか知らないんだっけ?」     「エエ――少ナクとモ、私ノ居タ場所でハソノヨうナ方は存在シテイマせンネ」      少年が肯定したのを確認すると、少女はうんうんと頷き じゃあ簡単に、と口を再び開いた。     「閻魔様ってのはね、魂を裁く人の事さ。その魂が生を終えるまでに行った事を踏まえて、天国に行くか地獄に行くかを判断する仕事。まあ、私たちみたいな死神にとっちゃ、雲の上の人だよ」      裁くからには規律に厳しい人も多いしね、とも付け加えた。      閻魔とは何なのかを聞いた少年は、頭の中で聞いたままの閻魔像を思い描く。厳格な表情、堂々とした態度、髭のたくわえられた男のイメージが生まれた。しかし、あくまでそれは想像の範疇でしかない。  今話している少女の後ろで青筋を立てている小柄な少女がもしかしたら閻魔なのかもしれない、と少年は考えていた。     「デハ、閻魔様ニつイテ伺ッテモヨろシイデシょウカ?」     「ん、言ってごらん」      その可能性は否定出来ない、ならば聞いてみるのが1番早いと、少年は少女に聞くことにした。     「閻魔様ノ姿ハ、コノ位ノ身長デ碧髪の女性デハあリマセンカ?」      少年の言葉に少女は少し驚き、よく知ってるねぇと頷いた。  後ろに居ると言うべきなのだろうか。  話の流れを読みつつ話すべきだろうと、少年は開こうとした口を閉じた。     「それにしても、よく閻魔様の事が分かったね。普通なら髭を生やした体格の良い親父とか出て来るもんだけど」     「――それは私が貴方の後ろに居るからですよ、小町」  
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