黄泉行

4/4
前へ
/138ページ
次へ
 大鎌を持った少女――小町が閻魔らしき少女に説教をされ一刻。  もうだめだと言わんばかりに彼女は川の辺にある大岩に寄り掛かり、真っ白に燃え尽きている。  それに目をやる少女はなっていないと駄目出しを送り、小町に向けていた視線を少年へと移した。  視線に気付いた少年は少女に向かい深い釈する。  そして下げていた頭を元の位置へと戻し、口を開いた。     「貴方ガ、彼女ノ言ッてイタ閻魔様――デスネ」      少年の言葉に少女は頷く。外見こそ小柄な少女であるが、放たれる風格に確かな威厳を少年は感じとった。     「いかにも、私の名は四季映姫・ヤマザナドゥ。此処、幻想郷を担当している閻魔」      少女――映姫は自らを名乗り少年へと軽い釈、そして釈で伏せた目を上げ少年を見据えると、一人何かを納得したように頷いた。     「その身体は――成る程、確かにその罪は重い。理由はどうであれ、邪な儀式に身を染めた貴方には地獄しか行き先は存在しません」      少年の身体に刻まれた印字を見抜いた映姫は、その一つ一つの意味を読み取り、苦虫を噛んだ様な表情を浮かべる。     「この印は――ふざけているのかしら、術者でさえ使い捨てにされているとしか考えられない。それにこんなものは鬼を布で縛り付けた程度にしか――」     「元ヨリ、コれハ一時凌ギノ為ニ行っタ儀式デス。――今ノ権力者達ガ生きテイル内ニハ破壊サレル事ハアりマセン」      私の居た場所はそんなものですと、少年は仮面越しに皮肉な笑みを浮かべる。今更ながら、自分の居た世界が異端である事を再認識する事になるとは。     「必然に罪を犯さなければ生きていけぬ世界――なるほど、道理で閻魔が存在していないはず。しかし癪ですね、これでは私が説教を行っても意味が無い」      そう言って映姫は俯く。  抑、大罪を犯すことで生を得られるのなら、地獄という存在自体がその概念から逸脱してしまう。それこそ審判自体が無意味、死を認識出来るものは全て罪人であるのだから。     「――地獄とハ」      少年の言葉に映姫は顔を上げる。     「地獄トハ、己ノ後悔を清算出来ル場所ナノデしョウカ?モシ、清算出来ルノナら――」          私は地獄へ行きたい。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加