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妹子が少しふらふらしながら朝廷へ向かった少しあとのこと。
二人は何かするワケでもなく水辺でのんびりしていた。
太子は湖に足を膝まで浸からせて座り、鼻歌なんか歌っている。
竹中はこりずに湖でスイスイ泳いでいた。
「…竹中さん」
竹中は泳ぐのを止め、意思表示なのか、
後頭部の尾で水をぱしゃっと跳ねさせた。
ぼそっとした呼びかけだったが、聞こえたようだ。
「…ありがとうございます」
「? 私が何かしたかな」
「えぇ。妹子を休ませてくれました。
…私じゃ、聞いてくれませんから」
「…。後押ししたのは太子だろう。
私は促しただけだし」
「…まぁ、そうですね…」
苦笑いして、手近にあった石をひょい、と湖に投げた。
ぽちゃん、と波紋が広がる。
その様子を、太子はぼんやりと眺めていた。
………いつもの太子じゃない。
竹中は怪訝に思いながら、太子に近づいていく。
そして、
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