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いつものようにソファーに座って、子安さんが甘い甘いコーヒーを出してくれる。
私が苦いの苦手だと言ってから、すごく甘いのを出してくれるようになった。
懐かしい。
『お子ちゃまだな~(笑)』
なんていいながらも・・・。
『すっげ、甘っ 俺甘いの苦手じゃないけど、甘すぎ』
なんて。
そんなことを思い出してしまって、笑ってしまった。
ふいに、緊張が緩む。
「どうした? 急にご機嫌だな」
「ぅ、うん」
そんなこと、思い出してる場合じゃない。
聞かなちゃ・・・。
でも、そんな勇気がでなくて。
私の手が震える。
「あの、ね」
「ん~?」
コーヒーを啜っていた子安さんは、ちょっと変な声をだした。
でも、真剣な私を見て、子安さんもコーヒーカップを置き、私に向き合った。
「あのね・・・今日、友達に言われて知ったん、ですけど・・・」
「・・・どんなこと?」
怖い・・・。
「子安さん、って・・・結婚、していたんです、ね」
震える声で言い切った。
確信を突いた話に、目を見開く子安さん。
驚きを隠せないようだった。
やっぱり・・・本当だったんだ。
痛い・・・。
ボロボロ泣き涙が零れてしまう。
泣きたくなくても、次から次へと。
「私のこと、ただの、愛人としか見てなかったんですね」
「鈴」
「なんですか? あんなに好きだって、言ってくれてたのに、奥さんに会えないからって、私で遊んで・・・っ」
言葉の途中で塞がれる唇。
いつもなら、安心できるのに。
でも、今日は気持ち悪くて仕方がない。
身体を強く叩くも、離してはくれない。
息ができなくて、辛くて、余計涙が溢れだす。
「も、触らないで!」
「・・・鈴・・・」
「いらない! こんなモノ!!」
子安さんに向けて貰っていた合い鍵を投げ付けた。
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